2日目のカレーはウェルシュ菌が増えて食中毒を起こす恐れがあるという話は有名ですね。
でも、食中毒を起こすほどのカレーがどんな味でどんな臭いがするのか、あなたは知っていますか?
ウェルシュ菌により食中毒も気になる話題ですが、増殖したときのカレーの味と臭いは一体どうなのか、とても気になったので調べてみました。
目次
1.なぜ2日目のカレーは美味しいのか?
カレーを作って1日置いた「2日目のカレー」は美味しいですよね!
カレーを作って一晩置くと、食材からアミノ酸など、旨味成分が出てくるので美味しくなると考えられています。
わざわざ翌日まで待ってから食べるという人もいるくらいですから、ほとんどの人が作り置きして、2日目のカレーも楽しみにしているのではないでしょうか?
ちなみに、冷蔵するとアミノ酸などうまみ成分が少なくなって味が落ちるそうですが、オイスターソースをスプーンで1~2杯加えることで美味しくなるそうです。
2.ウェルシュ菌の特徴
ウェルシュ菌は、土壌やヒトなど生物の腸内、河川、下水などに幅広く分布しています。菌が付着した食品を食べることによって人体内に感染し、6~18時間の潜伏期間を経て食中毒を発症します。
ウェルシュ菌は、どこにでもいるものですが、肉・魚介類、野菜(カレーの場合、特にじゃがいも、人参などの根菜類)に付着してキッチンにやってきます。
ではどうして、生野菜などを食べても食中毒にならないのかというと、菌を1~2個くらい摂取したからといって発症しないからです。
食中毒を発症するためには、ある程度まとまった個数が摂取が必要です。これを「発症菌数」と呼びます。
<食中毒の原因とされる主な菌の発症菌数>
- O-157:100個程度
- サルモネラ菌:1万〜10万個程度
- ウェルシュ菌:1000万個程度
3.カレーでウェルシュ菌が増えるわけ
実は、カレーだけではなく、シチューや筑前煮などの煮物などもウェルシュ菌が増えるのに適しているそうです。
では、なぜこのような料理でウェルシュ菌が増えるのかというと、
- 作り置き出来るくらいの大きい鍋でつくるから
- 中心部分まで冷えるのに時間がかかるから
- 鍋底まで空気が触れないから
などの理由があります。
「カレーはよく煮込むので熱殺菌できるし、スパイスが効いているから菌は増えないだろう」と、あなたは考えていませんでしたか?
でも、そんなことは関係ありません。
ウェルシュ菌の恐るべき特徴
1)危険を感じると芽胞という状態になる
2)芽胞をつくると100℃で1~4時間または6時間死なないものもある
3)酸素を嫌い(嫌気性菌)、酸素に触れると死んでしまう
4)繁殖しやすい温度は20~55℃くらい(43~47℃に最も増殖)
5)増殖するとき毒素を出す(⇒食中毒を起こさせる)
6)8時間で281倍にも増殖
グツグツと煮えたぎる鍋の中はとてもイヤな環境です。熱に弱い他の食中毒菌はどんどん死んでいきますが、ウェルシュ菌は芽胞(がほう)という状態になります。カプセルのようなバリアをつくって眠っているような状態です。
1時間ほどの加熱に耐えるので、グツグツ煮込んでも死にません。
その状態で調理が終わるとどんどん温度が下がっていくわけですが、温度が45℃前後になるとウェルシュ菌は芽胞が発芽して(バリアを破って出て来るイメージ)どんどん増えていき、毒素を出します。
このようにして、ウェルシュ菌が増殖した状態で、しかも毒素も混じっているカレーを食べてしまうと、食中毒を起こしてしまうのです。
4.ウェルシュ菌食中毒の症状
潜伏期間が6時間~18時間ほどなので、昼食べたあと夜になって下痢や腹痛、嘔吐の症状が出たり、翌朝に症状がでたりということがあります。
O-157に比べると、毒性の強さはさほどではありません。
なので、ウェルシュ菌が原因の食中毒は1~2日で収まるようです。
最近では、3月に以下のような出来事がニュースになりましたね。「朝日新聞デジタル」によると、
3月8日夕方から翌朝にかけて、東京・世田谷の私立幼稚園の園児67人と教職員9人の計76人が次々と、下痢や腹痛、嘔吐(おうと)の症状を訴えた。
複数の患者の便からウェルシュ菌が検出され、保健所は、8日昼の「年長組を送る会」で食べたカレーが原因と断定。カレーは、7日午前11時ごろから、教職員と園児が職員室で、二つの大きな鍋を使って作り、そのままの状態で、一晩常温で保存。食べる直前に再加熱したという。
「大きな鍋を使って作り、そのままの状態で、一晩常温で保存」したもののようなので、十分注意が必要でしたね。
5.ウェルシュ菌が増えた後の「味と臭い」
ところで、ウェルシュ菌が増えた後の、カレーの味と臭いは一体どんなものなのでしょうか?
夏場、暑い季節、常温で置き忘れた鍋料理の中を見たことがありますか?
臭いを嗅いでみたことがあります?
私の経験からすると、「変色している」「糸を引く」「ドロドロしている」「酸っぱい臭いがする」「味が酸っぱい」などが思い出されますが、あなたはどんな状態を経験したことがありますか。
では、一体ウェルシュ菌の場合はどうなのかというと、
答えは「無味無臭」なんだそうです。
「なぁ~んだ」と思ったかもしれませんが、案外これって怖いと思いませんか?変な味も臭いもしないということは、何も気づかずにカレーを食べてしまうということですよね。
何かちょっとでも変化が欲しいと思うのは私だけでしょうか。
6.ウェルシュ菌食中毒の予防と対策
ウェルシュ菌による食中毒の予防と対策として、どのようなことをすればいいのでしょうか?
まず1つめは、そもそもウェルシュ菌を「つけない」ということでです。
- 手を十分に洗う
- 野菜をしっかり洗う
- まな板を洗剤で洗い、75℃以上のお湯で熱殺菌する
どこにでもいる菌ですが、できるだけ少なくすることが第一歩ですね。
そして、2つ目が、
(1)ウェルシュ菌を増やさない正しい保存の仕方
ウェルシュ菌を増やさないためには、ウェルシュ菌の特徴を逆手にとればいいわけです。
- 10℃以下または55℃以上にたもつ
- タッパなどに小分けにする
- 酸素に触れさせる
- 早めに冷やす
小分けにしたものを氷水にひたして急冷するのが最も効果的です。
例えば、口が広く底の浅いタッパなどにカレーを入れることで、酸素に触れる部分が多くなりますし、浅いと冷めやすくなります。
このとき、かき混ぜて酸素に触れさせながら容器に入れるといいですね。
しかも、氷水にひたして急冷することによって、ウェルシュ菌が繁殖しやすい温度帯である時間が短くなるというわけです。
最後3つ目は、
(2)ウェルシュ菌を死滅させて毒素を無害化する
冷蔵庫で一晩置いたカレーは「電子レンジで加熱して食べればいいかな」と思うかもしれませんが、これはNGです。
まだ芽胞を作っていない状態のウェルシュ菌は熱に弱いので、食べる前にしっかり温め直さなくてはいけません。容器の中心付近の温度が75℃以上に1分以上なるように加熱することで、毒素が無害化されます。
そしてこのときにまんべんなくかき混ぜるようにしましょう。
かき混ぜることで酸素を多く含ませることになります。ウェルシュ菌は酸素に触れるとしんでしまうので、まんべんなくかき混ぜます。
以上より、
- しっかり中心付近まで温める
- まんべんなかき混ぜる
ということが重要だと言えますね。
まとめ
他の食中毒予防対策にも言えることですが、ウェルシュ菌の食中毒の予防対策は、簡単にまとめると次の3つです。
- つけない
- 増やさない
- 殺菌する
そもそもウェルシュ菌を減らす手や調理器具等をしっかり洗っておきましょう。
そして、ウェルシュ菌を増やさないためにも、作り終えたら平たい容器に酸素に触れさせながら小分けして、急速に冷やします。
食べるときには、中心付近が75℃以上で1分以上加熱させるくらい加熱してから食べるようにしましょう。この場合もかき混ぜながら酸素に触れさせるようにして殺菌し、毒素も無害化するように心掛けましょう。
と、ここまで、ウェルシュ菌の食中毒についてまとめてきましたが、手っ取り早いのは作ったらすぐ食べてしまうのが、もちろん一番の予防であり対策です。